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日薬理誌第138巻第5号 2011年11月

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アゴラ
行動薬理学と精神薬理学
山田清文 ---- 175

特集: 心血管疾患と炎症
序文 中谷晴昭, 古川哲史 --- 177

1:肥満と自然炎症
小川佳宏 --- 178

2:動脈硬化の病態における慢性炎症の役割
佐田政隆 --- 182

3:心不全と炎症―12/15リポキシゲナーゼによる炎症の役割について
南野 徹 --- 187

4:心房細動と炎症―心房細動進展による炎症性細胞動員―
古川哲史、大石咲子、笹野哲郎 --- 192

総説
血管内皮細胞における血流刺激のメカノセンシング
山本希美子,安藤譲二 --- 196

創薬シリーズ6 臨床開発と育薬 (1) (2)
臨床開発と薬理学
西村(鈴木)多美子 --- 201

臨床試験の実施の基準(GCP)
竹澤正行  ---- 205

新薬紹介総説
新規乳がん治療薬エリブリン(ハラヴェン®静注1 mg)の抗腫瘍メカニズムと臨床効果
小山則行、徳永武志、小笠原若菜、村上美幸、山下雄次 ---- 209

キーワード解説
プロトンポンプとプロトンチャネル
久野みゆき --- 219

最近の話題
製薬企業のiPS細胞研究
中西 淳 --- 221

TRPチャネル創薬の現状と今後の展望
西田基宏 --- 222

学会便り
The 3rd International Symposium on Non-neuronal Acetylcholine(フローニンゲン,オランダ)に出席して
川島紘一郎 --- 223

リレーエッセイ
先輩達の足跡を追いかけて
佐々木拓哉 --- 224

新教授紹介
106A 木澤靖夫

お知らせ
前綴込  公告 臨時総会開催
105A  役員・委員選挙実施日程
106A  安全性情報No.283,募集
107A  Calendar  
108A  JPS117:2目次
181頁  次号予告
表2対向  執筆の手引き
表3   役員一覧

著者プロフィール
181,185

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特集:心血管疾患と炎症
近年,心不全、メタボリック症候群などの心血管系疾患の病態発現の背景に慢性炎症があることが明らかとなった.本企画では,メタボリック症候群,心不全,動脈硬化,心房細動の先端的研究をされている4先生から心血管系疾患における炎症機転の新知見を紹介いただく.(中谷晴昭 序文 p.177)

肥満と自然炎症
全身臓器において細胞間相互作用により遷延化する炎症反応のうち、障害を受けた実質細胞より放出される内因性リガンドとマクロファージなどの間質細胞に発現する病原体センサーの相互作用により誘導される慢性炎症を理解するために、微生物に由来する外来性リガンドと病原体センサーの相互作用により誘導される自然免疫と対比させて、「自然炎症(homeostatic Inflammation)」の概念が提唱されている。(小川佳宏 p.178)

動脈硬化の病態における慢性炎症の役割
動脈硬化は生活習慣病によって血管壁に生ずる慢性炎症が原因と考えられている。その機序としては、従来考えられていた血管内腔側からの炎症細胞の浸潤ばかりでなく、外膜周囲での炎症細胞の集積、Vasa Vasorumにおける血管新生、周囲での脂肪組織の形質転換の関与が注目されている。(佐田政隆 p.182)

心不全と炎症
心不全の病態生理には、交感神経系やレニンアンジオテンシン系などの液性因子の制御異常が関与していると考えられているが、最近では、心臓における炎症の役割についても注目されている。本稿では、心不全に関わる炎症分子について、とくにアラキドン酸カスケードの関与について述べる。(南野 徹 p.187)

心房細動と炎症
心房細動は臨床上もっとも頻度の高い不整脈である。高血圧、メタボリック症候群、加齢など多数の環境リスク因子による病態発現の共通基盤に慢性炎症が存在する。今回、心房筋伸展による心房炎症の初期メカニズムとしてパラクライン作用によるマクロファージ動員が関与することが示唆された。(古川哲史 p.192)

総説
血管内皮細胞における血流刺激のメカノセンシング
血管内皮細胞には血流に起因する流れずり応力と心拍に伴った血圧変化による伸展張力が作用する。内皮細胞は、メカニカルストレスである流れずり応力を介して血行動態の変化を捉え、それに応答することで循環系の恒常性を維持している。そしてそれが障害されると高血圧や粥状動脈硬化といった血管病の発生につながる。本稿では、流れずり応力に焦点を当て、内皮細胞の血流センシング機構と、それが循環調節に果たす役割について紹介する。(山本希美子 p.196)

創薬シリーズ 6 臨床開発と育薬 (1), (2)
臨床開発と薬理学
新薬の承認審査では申請品目のリスク・ベネフィットバランスが評価され,効能・効果,用法・用量,使用上の注意の妥当性が審査される.薬理試験とベネフィット,薬理試験とリスクの関連性を,日米EU医薬品規制調和国際会議のガイドラインや厚生労働省の通知類をもとに解説した.また,既承認の抗体医薬品を例に,薬理試験データのヒトへの外挿を紹介し,臨床開発を導く薬理学研究のポイントを説明したい.(西村(鈴木)多美子 p.201)

臨床試験の実施の基準(GCP)
GCP(Good Clinical Practice)は、医薬品開発段階の臨床試験(治験)を実施する際の規準であり、動物が対象となる安全性に関する非臨床試験を実施する際の規準であるGLP(Good Laboratory Practice)と同じく、厚生労働省令となっている。GCPを遵守しないで実施された治験のデータは、厚生労働省に医薬品としての製造販売承認申請を行う際の承認審査資料として使用できなくなるので、重要な基準である。(竹澤正行 p.205)

新薬紹介総説
新規乳がん治療薬エリブリン(ハラヴェン®静注1 mg)の抗腫瘍メカニズムと臨床効果
エリブリン(ハラヴェン®)は「手術不能または再発乳がん」に対する新薬である。化学療法治療歴のある転移乳がん患者を対象にした臨床第III相試験にて、全生存期間の有意な延長が証明された。微小管阻害薬であるが従来の類薬とは異なり、微小管の重合部位に選択的に高親和性に結合し、微小管重合を阻害する新規のメカニズムを有し、がん細胞の増殖を停止させアポトーシスを誘導し、腫瘍を縮小させる効果を有する。(小山則行 p.209)

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