日本薬理学雑誌 > バックナンバー >

日薬理誌第139巻第2号 2012年2月

目次 ハイライト top

アゴラ
私の薬理学原風景
富樫廣子 --- 49

特集: トランスポートソームの破綻による疾患と創薬標的としての可能性
序文 中川貴之,喜多紗斗美 --- 51

1:オーバービュー:疾患発症の基本ユニットとしてのトランスポートソーム
安西尚彦 --- 52

2:コレステロールの胆汁排泄におけるトランスポートソーム
高田龍平、山梨義英、鈴木洋史 --- 56

3:Na+/Ca2+交換輸送体をめぐるトランスポートソーム
喜多紗斗美、岩本隆宏 --- 61

4:尿濃縮を担うアクアポリン複合体
野田裕美 --- 66

総説
インスリン抵抗性高血圧と血管周囲神経機能変化-機序解明への新たなアプローチ
髙取真吾、座間味義人、橋川(芳原)成美、川﨑博己 --- 70

新薬紹介総説
閉経後進行・再発乳がん治療薬フルベストラント(フェソロデックス®)の薬理学的特徴および臨床試験成績
矢野誠一、鎌野世民、佐藤稔康、陳  嵐 --- 75

キーワード解説
ドパミンD2L受容体
塩田倫史、福永浩司 --- 84

最近の話題
光で神経活動を操作して、睡眠覚醒行動を制御する~夢のようなホントの話~
山中章弘 --- 86

精神疾患の新しい病態仮説:カルボニルストレス
新井 誠、糸川昌成 --- 87

学会便り
第5回日中薬理・臨床薬理学ジョイント·ミーティング報告
谷内一彦 --- 88

リレーエッセイ
つながりを大事に
古谷和春 --- 89

新教授紹介
90頁 丹野孝一

お知らせ
前綴込  第5回江橋節郎賞決定
       第27回学術奨励賞決定

11A-15A  第85回年会案内(第3報)
16A 公益社団法人 日本薬理学会の発足, 事務局NEWS,訃報
17A  Calendar  
18-19A  集会案内
20A  次号予告、安全性情報No.286
21A   JPS118:1目次
22A  執筆の手引き
広告第1頁  英語目次  
表3   役員一覧

著者プロフィール
55, 60, 65

ハイライト 目次 top


特集:トランスポートソームの破綻による疾患と創薬標的としての可能性
近年、膜輸送分子が制御分子や足場タンパク質と集積して複合体として機能する「トランスポートソーム」の概念が定着してきた。本特集では、トランスポートソームの破綻が病態形成に関与していることを示した研究内容を紹介する。(中川貴之 序文 p.51)

疾患発症の基本ユニットとしてのトランスポートソーム
生体膜トランスポートソーム(物質輸送複合体)とは、単一輸送分子(チャネル・トランスポーター)が、様々な相互作用によって関係しあった輸送分子群、機能制御分子群、それを束ねるscaffold(「足場」)タンパク質群からなる生体膜物質輸送の機能単位とする概念である。その生理機能の破綻が疾患の病態形成に関与し、応用研究へと展開することが可能になった研究例を紹介する本企画を概説する。(安西尚彦 p.52)

コレステロール胆汁排泄におけるトランスポートソーム
コレステロールの胆汁排泄はコレステロール恒常性維持を担う重要なプロセスの1つであり、脂質異常症や肝胆道系疾患の発症リスクとの関連が注目されている。本稿では、胆汁中に分泌されるコレステロール結合タンパク質NPC2とコレステロールトランスポーターABCG5/G8およびNPC1L1の間に見出された相互機能連関(トランスポートソーム)に焦点を当て、コレステロールの胆汁排泄制御機構に関する新たな知見を紹介する。(高田龍平 p.56)

Na+/Ca2+交換輸送体をめぐるトランスポートソーム
1型Na+/Ca2+交換輸送体(NCX1)は,心筋や平滑筋において主にCa2+汲み出し系として機能すると考えられているが,我々はNCX1を介するCa2+流入が食塩感受性高血圧の発症やα1受容体刺激による血管収縮に重要な役割を果たすことを明らかにした.本稿ではその作用機序について解説し,血管平滑筋細胞におけるNCX1を構成分子としたトランスポートソームの実在について考察する.(喜多紗斗美 p.61)

尿濃縮を担うアクアポリン複合体
アクアポリン2は水分子のみを通し、他には一切の分子を通すことはないという特徴をもつ水チャネルである。アクアポリン2は腎臓の集合管で尿濃縮を制御し、体内水分量調節を担っている。アクアポリン2の機能異常により体内が重篤な脱水となる腎性尿崩症や、心不全、肝硬変、神経疾患などで問題になる水利尿不全が生じる。アクアポリン制御機序の解明により尿崩症および水利尿不全の新規治療法の開発が進むことが期待されている。(野田裕美 p.66)

総説
インスリン抵抗性高血圧とインスリン抵抗性に伴い高インスリン血症と高血圧が進展する。高血圧発症メカニズムとして、高インスリン血症では、血管周囲の血管拡張性calcitonin gene-related peptide(CGRP)含有神経の分布減少と機能低下、血管収縮性交感神経の分布増加と機能亢進を介して血管調節機構に異常が生じる結果、高血圧が発症・進展するという新たな知見と機序を概説する。(髙取真吾 p.70)

新薬紹介総説
閉経後進行・再発乳がん治療薬フルベストラント(フェソロデックス®)の薬理学的特徴および臨床試験成績
フルベストラント(フェソロデックス®)は,エストロゲン受容体のダウンレギュレーション作用を有するアゴニスト作用のない新しいタイプの抗エストロゲン薬であり,閉経後乳がん治療薬である.フルベストラントはエストロゲン応答遺伝子の転写活性化能を示さず,乳がん・子宮以外の組織においてもエストロゲン作用を示さなかった.フルベストラントはタモキシフェン耐性腫瘍に対しても抗腫瘍効果を示した。(矢野誠一 p.75)

ハイライト top 目次 top


このページの先頭へ