日本薬理学雑誌 > バックナンバー >

日薬理誌第140巻第2号 2012年8月

目次 ハイライト top

アゴラ
科学者のしたいこと
平 英一 --- 51

特集:漢方薬理学:補完・代替医療としての薬理学的エビデンス
序文
佐藤広康 --- 53

漢方薬理学:補完・代替医療としての漢方方剤
佐藤広康 --- 54

漢方薬の未病に対する血管薬理学について
西田清一郎、佐藤広康 --- 58

インフルエンザウイルスの増殖抑制効果を有する漢方薬成分
宮崎忠昭 --- 62

抑肝散の認知症に対する治療効果の行動薬理学的実証
岩崎克典、高崎浩太郎、野上 愛、窪田香織、桂林秀太郎、三島健一、藤原道弘 --- 66

医療としての「アロマテラピー」の可能性を探る:吸入による芳香性生薬類の作用
伊藤 謙,伊藤美千穂,高橋京子 --- 71

総説
正常上皮細胞と変異上皮細胞間の相互作用とその臨床応用
梶田美穂子,藤田恭之 --- 76

創薬シリーズ6臨床開発と育薬(17)
GPSP: 医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準
熊野伸策 --- 81

新薬紹介総説
新規レストレスレッグス症候群治療薬カバペンチン エナカルビル(レグナイト®錠)の薬理学的特徴および臨床試験成績
柿元周一郎,小澤 徹,五十嵐 澄,得能朝成,加来聖司,関 信男 --- 85

キーワード解説
膵β細胞とオートファジー
綿田裕孝、藤谷与士夫 --- 94

最近の話題
骨組織による糖脂質代謝調節機構
檜井栄一 --- 96

視覚剥奪動物における体性感覚向上の分子細胞メカニズム
高橋琢哉 --- 97

リレーエッセイ
面白いと思うことが原動力
伊藤由彦--- 98

追悼
49頁 木村正康先生のご逝去を悼む  倉石 泰

新教授紹介
9A 武田泰生

お知らせ
前綴込  代議員選出の件
9A  事務局NEWS,助成金
10A  実験薬理学「実践治療薬」の刊行
11A  Calendar
12A  集会案内、募集
13A  次号予告,安全性情報No.291
14A  JPS119:3目次
15A  執筆の手引き
表3  役員一覧

著者プロフィール
57,61,75,80

ハイライト 目次 top


特集:漢方薬理学:補完・代替医療としての薬理学的エビデンス
漢方薬の特徴は多くの含有有効成分の混在した複合多成分薬であり,そのため多彩な薬理効果をあらわす.根柢にある多様な作用機序が補完・代替医療として,とくに小児,婦人,高齢者に対して臨床的意義を表す.多くの疾病,未病,予防に対して,治癒改善,QOL向上,緩和医療を図るべきである.(佐藤広康 序文 p.53)

漢方薬理学:補完・代替医療としての漢方方剤
補完・代替医療として,最も臨床医学的といえるのは漢方薬であり,多くの疾病に対して処方されている.その重大な意義を保持していくには,現在の難解な「証」を打ち破った現代医療に合った基準の創設が必要である.(佐藤広康 p.54)

漢方薬の未病に対する血管薬理学
漢方医学において,最も大きな課題のひとつに「未病」がある.「未病」とは,「病」を引き起こす体内に潜む異常な状態を示すが,漢方医学的には「?血」と深いかかわりがあると考えられている.「未病」に対する今日的な解釈として,酸化ストレスの蓄積が挙げられる.「?血」を治療する漢方薬は,抗酸化作用を示すことが知られているが,「未病」を治す可能性について,血管薬理学的に検討した.(西田清一郎 p.58)

インフルエンザウイルス増殖を抑制する漢方薬
漢方薬である銀翹散(ぎんぎょうさん)と麻黄湯(まおうとう)がインフルエンザウイルスのプラーク形成阻害効果を示したため,エチルアセテート,メタノール/クロロホルムにより分離し,さらに,シリカゲルカラムで分画した結果,非常に高い活性を有する画分が得られた.今後,これら画分に含まれる物質を特定しその薬理活性を調べ,インフルエンザ治療薬の候補物質を同定する.(宮崎忠昭 p.62)

抑肝散の認知症に対する行動薬理学
アルツハイマー病などの認知症の周辺症状の改善に従来の抗精神病薬に替わって漢方薬である抑肝散(よくかんさん)が有効であること,この作用は前頭前野のセロトニン神経を介するもので構成生薬の中でも釣藤鈎(ちょうとうこう)が果たす役割が大きいことがわかった.さらに抑肝散は認知症の中核症状にも有効で,この場合は当帰(とうき)によるアセチルコリン神経賦活作用が重要であることが明らかになった.(岩崎克典 p.66)

医療としての「アロマテラピー」の可能性
補完代替医療(CAM)のひとつに,香りの吸入により精油成分のもつ薬理作用を利用し,心身の疾病予防や治療に応用するアロマテラピーがある.揮発性の高い化合物を気化状態で吸入すると,体内に吸収され,非侵襲的に生物活性を表すとされるが,天産物由来の成分探索や多様な効能に対する科学的なエビデンスの蓄積に乏しい.そこで,著者らは医療としての「アロマテラピー」の可能性を探るべく,マウスを用いた実験系を構築した.(伊藤 謙 p.71)

総説
正常上皮細胞と変異上皮細胞間の相互作用と臨床応用
正常上皮細胞と変異細胞は互いの違いを認識し,シグナル伝達に影響を与え合うことが明らかとなってきた.この細胞間相互作用によって,変異細胞の正常細胞層からの逸脱や,アポトーシスによる細胞層からの排除が生じる.すなわち正常上皮細胞には変異細胞の増殖・浸潤を抑制する抗腫瘍能力が備わっていると考えられる.今後,この新規な研究分野の発展とともに新しいタイプのがん治療法の確立に繋がっていくことが大いに期待される.(梶田美穂子 p.76)

創薬シリーズ6 臨床開発と育薬(17)
GPSP: 医薬品製造販売後の調査及び試験の実施基準
GPSPは,新医薬品の再審査・再評価のために行う製造販売後調査・試験の実施基準である.目的とする再審査制度の歴史と現状を解説した上で,その信頼性基準であるGPSP省令を簡潔に紹介する.さらに,欧米で導入され今後日本にも導入される医薬品リスク管理計画(RMP)との関連についても考察した.(熊野伸策 p.81)

新薬紹介総説
新規レストレスレッグス症候群治療薬の薬理学と臨床試験
新規レストレスレッグス症候群(RLS)治療薬であるカバペンチン エナカルビル(レグナイト®錠)は,ガバペンチンのプロドラッグである.本剤は,ガバペンチンと異なる経路で消化管より吸収されるため,ガバペンチンで問題となる投与量の増加に伴うバイオアベイラベリティの低下がなく,経口投与時の血中濃度の個体差が小さくなるようにデザインされている.実際に,臨床試験において,ガバペンチンに比べ優れた薬物動態特性を示し,また中等度から高度の特発性RLS患者の症状に対して優れた改善効果を示した.このことから,カバペンチン エナカルビルはRLSの薬物治療に新たな選択肢を提供する薬剤になると期待される.(柿元周一郎 p.85)

ハイライト top 目次 top


このページの先頭へ