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日本薬理学雑誌: 海外ラボ紹介PENN

University of Pennsylvania School of Modicine,
Department of Parmacologyより

Philadelphia, PA 19104-6084, USA.     

文部省在外研究員として,私はUniversity of Pennsylvania(PENN)School of Medicine,Department ofPharmacologyに2000年6月末より1年の予定で滞在しています.

PENNのあるフィラデルフィアは,NewyorkとWashington DCのちょうど中間に位置し,どちらにも車で2時間程度,Amtrakなら1時間強という距離です.フィラデルフィアは米国で最も古い街の一つであり,独立宣言が採択された街として,ハイシーズンには米国中から観光客が訪れます.

気候は,夏蒸し暑く,冬は寒いといわれ,どこか日本の気候と似たところもあります,実際,夏はしばしば激しい夕立に見舞われます.PENNの創始者,Benjamin Franklinが雷の実験を行ったのは,フィラデルフィアのこの気候があってこそだったとも言われています.

PENNは,米国で最も古い大学であり,医学部も米国で最初に(1765年)設立されました.19世紀後半にPENNはcenter cityから現在の西フィラデルフィア地区に移転しますが,移転当初に建てられたCollege HallやLogan Hallは,現在も歴史的建築として保存ざれ,キャンパスの中心的存在です.とくにLogan Hallは,今からちょうど100年前1900年),かの野口英世先生がSimon Flexner博士(Pathology)の助手として赴任された場所であり,日本人にとっては特別の意味を持ちます,

キャンパスには,付属病院,ratの名前でも知られるWistar Institute, Children's Hospital of PhilladelphiaなどのMedica1関連部局の他,白川氏と共にノーベル賞に輝いたProf. MacDiarmidを擁するSchool of Arts & Sciences,経済学で有名なWharton Schoo1などの学部も隣接し,多くの学生達であふれています,

私が所属しているDepartment of Pharmacologyは(Chairman: Garret FitzGerald),最も古いJohn Morgan Buildingにあるラボ群と,関連部門として,最も新しい建物にあるThe Center for Experimental Therapeuticsを有し,50名を超えるProfessor陣を抱える大所帯となっています.

研究内客も,(1)Neuropharmacology, (2)Cancer Pharmacology, (3)Cardiovascl11ar Pharmacology, (4)Pharmacogenetics, (5)Pharmacological Chemistryと,多岐に渡っています.とくに(5)の分野では,Structural Biologyのエキスパート違が結晶解析や構造活性相関の解析を実践しており,薬理学の分野にMedicinal Chemistryの幅を持たせています.

これだけの大所帯ですが,行事も多く,夏の屋外でのBBQParty,9月の新入生のためのWelcome Seminarがあったり,また10月に郊外のcollegeで行われる研修会は,Gordon Conferencesのような雰囲気です.従ってラボ間の風通しが非常に良く,Pharmacology内はもちろん,臨床や他大学との交流もさかんで,私にはまるで21世紀のNew Drug Developmentを見据えた製薬企業のように映ります.

さて,私が直接お世話になっているProfessor James Eberwineの仕事は,上述の(4)に分類され,疾息や薬物投与によって個々のneuronの遺伝子発現がどう変化するかを解析するとともに,神経細胞死や記憶形成に重要な候補因子を検索するという先駆的な研究を行っています.

ポストゲノム時代の,遺伝子から機能の解析へと展開する際にこのような解析は必ずや有力なツールとなるに違いありません.実際,米国内でも彼のアプローチは脚光を浴びているようで,毎週のように共同研究者が来訪しており,彼らと話しをするだけでも非常に良い刺激になります.

ChairmanのGarretが,Pharmacology内で発行しているNews Letterに興味深いエッセイを書いていました.「経済や文化に関してGlobalizationという言葉がしばしぱ用いられるが,ポストゲノム時代には科学者も,狭い専門領域を超えてものを考えるG1obalizationが必要になるだろう.しかしそういう時代になっても,研究者にとって必要なことは,熟練と信念に基づいて疑問を追求する姿勢である.」彼の言葉は,来る新世紀に向けて薬理学研究のあるべき姿を教えているように感じられました.

 

京都大・院・薬学研究科 杉本 幸彦

e-mail: sugimoto@pharm.med.upenn.edu

研究室の仲間達.後列右から2番目がEberwine教授,その前が筆者,女性が多いのがこのラボの特徴です.

http://www.med.upenn.edu/~pharm/

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