Eisai London Research Laboratories |
Gower
Street,London WClE6BT UK |
工一ザイは早くより「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を考え,ベネフィット向上を第一義とし世界の多様なニーズを充足する」ことを理念として掲げてきている.当社が企業理念を達成するための最重要基盤は世界の知能を結集してオリジナリティーの高い創薬活動をすることだと私たちは考えている. このような考えから,1992年に分子生物学・細胞生物学を学間基盤とし,高齢化社会でますます重要になる神経変性疾患を主な対象疾患とするロンドン研究所(Eisai London Research Laboratories, ELL)を完成させた.6階建ての研究所がロンドン大学(The University of London)のカレッジのひとつであるUniversity College London (UCL)のメインキャンパスに建設された. 3階分を当社が使用し,あとは大学に寄贈している.建物はノーベル賞を授賞されたUCLの神経科学者Bernard Katz教授の名に因んでBernard Katz Buildingと命名された.UCLに研究所を設立することになったのは,当大学が生物医学の研究分野で極めて高い実績を持っていること,大学当局がUCLを英国の生物医学の一大拠点にしようと大きな計画を持っていたことなどに依る. ELLは大学の研究室に出入りでき,技術の移譲,セミナーの相互参加,基礎生物学分野での最新情報を得やすいなど多くの便宜を享受出来る環境にある.研究所員はバイオロジストを主に,管理担当を含めて40人の研究所である.研究員の国籍は様々であり(5カ国),異質の文化や発想をぶつけあいながら互いに切瑳琢磨しつつ,仕事をしている. 研究領域は多発性硬化症,アルツハイマー病,パーキンソン病などの神経変性疾息である.薬物の大きな切り口としては神経細胞保護を基本メカニズムに考えている.多発性硬化症治療薬,パーキンソン病薬のブロジェクトでは血液脳関門の制御機構の解明から創薬を自指すものと神経細胞死,特にアポトーシスの機構解明からの創薬を目指すものと2つのアプローチを試みている. アルツハイマー病治療薬のプロジェクトはアミロイド,タウ蛋白に注力している.設立初期は基礎的な研究に重きがおかれていたが,数年前より創薬研究をとの方針から少人数ではあるが,薬理研究者・合成研究者も採用している.創薬には多くの研究機能の参画が必要であることから,現在では当社の筑波研究所との密接な連携を基に創薬研究を行っている. ELLが神経細胞を用いて創薬コンセプトを立証する.これを化合物に翻訳するために,各種細胞でのアッセイ系の構築をするなど創薬の初期段階の研究を行う.筑波研究所はhigh through put screening,化合物の構造活性相関,in vivo実験等を担当している.テーマ毎に筑波研究所とブロジェクトを組んでいるが,文慣習の違いが創薬に対する発想やアプローチに表れ,興味深い. 最近の成果を一つ挙げると,glutamate AMPA antagonistが多発性硬化症治療剤としての可能性を示唆する論文を出した(Nat Med 6,62-66, 2000). 最後に当研究所のそぱにある日本記含碑に刻まれているUCL前副総長John White教授の俳句を紹介する.『When distant minds come together, cherries blossom.』(はるばると こころつどいて はなざかる) この俳句のように,遙か離れた異質性に富むこの地に研究所を設立した私たちが英国人をはじめ多くの国の人々と心を一つにしてその目的を果たし,立派な花を咲かせ,病に苦しむ世界の多くの患者様にお役に立つことが私たちの夢である. エーザイロンドン研究所 所長 山西 嘉晴 (e-mail:Yoshiharu_Yamanishi@eisai.net) 写真はエーザイHPより http://www.eisai.co.jp/
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