日本薬理学雑誌: MUSC
Charleston
より |
171
Ashley Avenue, Charleston, SC 29425, USA |
サウスカロライナ州チャールストンにあるMedicalUniversity of South Carolina(MUSC)に留学して約2年半が過ぎようとしています.チャールストンはアトランタから東へ約290マイルに位置する太西洋岸の歴史的港町です. チャールストンには,植民地時代の古い町並みとプランテーションがあり,また歴史的には南北戦争の勃発の地として,多くのアメリカ人観光客が訪れています.気候的には亜熱帯に近く,夏は非常に暑く厳しいですが,冬は温暖で日本と比べて過ごしやすいところです. 南部特有のスパニッシュ・モスがあちこちに見られ,独特の景色をつくっています.MUSC は,1824年に医師育成のための私立大学として創設され,現在では医療センターおよび6つのcollege(Dental Medicine, Graduate Studies, Health Professions,Medicine, Nursing, Pharmacy)をもつ州立大学までに拡大しており,医学教育,研究,診療においてここ数年めざましい発展を続けています. 私が仕事をしている研究室のボスはDr. Yusuf A.Hannun (http://www.musc.edu/BCMB/Hannun.html)で,Department of Biochemistry and MolecularBiology のChairman も兼ねているため,多忙な毎日を送っています.研究室は,大学の敷地内にあるThe Strom Thurmond Biomedical Research Center の6階にあり,所属は違いますが,Dr. Hannun の奥さんのDr.Lina M. Obeid の研究室と一緒になっており,Dr. HannunとDr. Obeid のもと,全米各地からはもちろん,イスラエル,レバノン,イタリア,オランダ,フランス,イギリス,トルコ,中国,アルゼンチン,アラブ首長国連邦,日本など世界各地から集まった約30名のスタッフ,ポスドク,graduate student が働いています. 近年の研究により,スフィンゴ脂質のいくつかの分子種は細胞内シグナル伝達分子として,細胞増殖,細胞分化,細胞死などのさまざまな生理機能を担っていることが明らかになってきました.研究室のテーマは動物細胞および酵母(S. cerevisiae)におけるスフィンゴ脂質,特にceramide を介するシグナル伝達機構に関する研究です. 主なプロジェクトとしては,動物細胞の細胞内ceramideレベルを調節する酵素(sphingomyelinase, ceramidase, sphingomyelin synthase, sphingosinekinase),ceramide により活性化されるceramideactivated protein phosphatase のターゲット分子の同定および調節機構,酵母におけるスフィンゴ脂質の生理的役割を解明する目的で,スフィンゴ脂質代謝に関与する酵素の欠損株を用いた研究などです(http://www.musc.edu/BCMB). 最後になりましたが,留学の機会を快く与えて下さった眞崎知生先生,武藤誠先生,ご援助いただきましたThe Merck Company Foundation,萬有製薬株式会社,今回執筆の機会を与えてくださった三輪聡一先生に深く感謝いたします.
岡本 安雄 (e-mail: okamoto@musc.edu) MUSC医療センター |