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日本薬理学雑誌: Univ. of Chicago

Department of Neurology, The University
of Chicago
(シカゴ大学神経内科)

5841 S. Maryland Ave. MC 2030 Chicago, IL 60637-1470

2001年1月より1年間私が研究生活を行いましたDepartment of Neurology, The University of Chicagoを紹介いたします.私は1月にシカゴ入りしたのですが,寒い!いきなり最高気温氷点下10℃ の洗礼を受けました.中西部の名門大学であるシカゴ大学はダウンタウンから南へ車で10分程度のHyde Park にあります.

シカゴのダウンタウンの南と西方面は特に犯罪発生率の高い危険地帯なのですが,シカゴ大学のあるHyde Park 一帯だけは安全な地域となっています.ただ,その限られた地域から外に出ると,かなりワイルドな地域を体験することができます.

ノーベル賞受賞者数一位(らしい)を誇るシカゴ大学ですが,大学の規模はアメリカの大学としては大きな方ではありません.メインの病院(2つの大きなビルからなっています)および医学系研究施設は大学の最も南西に位置しています.

私のNeurology(神経内科)のラボも病院のビルの中にあるのですが,clinicのある区域とは遠く離れています.神経内科のChairman であるDr Roos は神経変性疾患に関する権威です.私のいたラボのPrincipal investigator(PI,ラボの主宰者をこう呼びます)はDr JamesBrorson(Jim)で,ラボは別名Glutamate receptor laboratoryとも呼ばれており,文字通りグルタミン酸受容体と神経疾患との関連を中心に研究を進めています.

小さなラボでメンバーはPI であるJim と私,テクニシャンの女性,それに時折参加する大学院生とstudent worker である学生,といった感じです.日常的にはPCRやウエスタン,免疫染色といったことからパッチクランプまでこなしますが,自分たちのラボだけではできないことは非常にフットワーク軽く共同研究を行っています(とはいっても本格的な共同研究の準備は大変ですが).

さて,私は1年の滞在という時間が限られていたのですが,確実にデータが出る既存の実験系で何かやるというより新しい実験系を作った方が面白い,ということで私とラボにとっていくつか新しいことを始めました.とにかく根底には神経変性疾患(特に筋萎縮性側索硬化症,ALS)に関する研究,という意識があったので,まず神経変性の際の重要なファクターの一つと考えられているCa2+透過性のAMPA 受容体の発現調節機構に注目しました.

特にサブユニットアセンブリがstochastic theory,すなわちタンパク発現量に応じた確率的過程に準じるのかどうかに関してグルタミン酸受容体サブユニットを強制発現させた細胞を用いたパッチクランプ法により検討を行いました.また,ALS において大脳皮質の皮質脊髄路(錐体路)細胞が選択的に障害を受けることからこの細胞の特異的脆弱性の検討も計画しました.が,最大の問題はこの細胞を数ある皮質神経細胞の中から生きている状態で同定することです.

今回私は蛍光色素を用いて幼若ラットの皮質脊髄路細胞を選択的に染色する方法を開発しました.この方法を用いて皮質脊髄路の発達過程やスライスパッチによる受容体チャネル特性の検討を現在も継続して行っています.

私は誰かの紹介によってラボを選んだのではなく,paperを読んで筆者とメールをやり取りしているうちに実際にそのラボに行って一緒に仕事をしたほうが早い,ということで行き先を決めたという少し変わった経過をとりました.ラボの情報など全くない状態で行ったのですが,Jim は誰からもNice Guy!といわれる人間で,人間関係やコミュニケーションなどで困るということは全くありませんでした.

アメリカにとっては激動の年だったわけですが,私にとっては非常に気持ちよく過ごせた1年でした

http://ucneurology.uchicago.edu/index.html

研究室にて.左より筆者,Dr Brorson,テクニシャンのMs Liebl

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