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海外ラボ紹介 U of Pennsylvamia日本薬理学雑誌:

Division of Endocrinology, Diabetes, and Metabolism
University of Pennsylvania School of Medicine
611 CRB, 415 Curie Blvd. Philadelphia, PA 19104-|6149, USA      

アメリカ合衆国のペンシルヴァニア大学(The University of Pennsylvania)はアメリカ北東部にあるフィラデルフィア(ギリシア語で兄弟愛を意味するとか)の市内にあります。この町は、独立宣言書への署名の地、リバティーベルに象徴される歴史の町で、ペンシルヴァニア州の東南端に位置しています(州都はハリスバーグという西の方の町です)。

キャンパスは町の中に呑み込まれたような具合で、ペンシルヴァニア大学一帯はUniversity Cityと呼ばれています。この大学は、Undergraduate Schoolを4校、Graduate and Professional Schoolsを12校擁する総合大学です。べンジャミン=フランクリンが創立した大学として通っており、キャンパス内に銅像も見られます(写真2)。

その歴史はアメリカ独立以前の1749年に遡り、独立戦争時の2年間ほどのブランクを経て、1779年にアメリカで最初にUniversityと名乗ったようです。私は2000年8月10日~2001年2月8日までの半年間ペンシルヴァニア大学医学部に滞在する機会に恵まれました。 半年間というのは留学というには中途半端な期間ですが、このようになりました経緯を申し上げます。

夫が文部省の在外研究員(長期出張)で4月20日からペンシルヴァニア大学の工学部に行きました。この出張が正式に決ったのが3月1日で、さらに具合が悪いことに書類を提出した時点での予定(4月20日?2001年2月8日)のまま変更がかなり困難だったのです。私は一人で息子(当時1才半)を世話する事になり、夜大学もどることも出来なくなりました。

神奈川県の実家に子供を預けると、仕事が出来ましたが母の体力続かないという事で、このような状態も長くは続けられませんでした。保育園時間(8時~6時、延長でも7時)でしか働けないのでは大学院生にも申し訳がたたないと思い、半年だけでもフィラデルフィアに行くことを教授にお願いした次第です。短期間だけの人を受け入れてくれる奇特な研究室があって、電子メールのやりとりで出来る仕事はするという事で許可をいただきました。

友人を介してペンシルヴァニア大学の先生を紹介してもらいましたところ、このような状況の私を受け入れて下さる親切な研究室がありました。それがMitch Lazar教授の研究室だったのです。 Lazar教授は核内受容体の研究分野において中心的人物として活躍しています。ラボにはResearch Fellow (PD)が6人、大学院生が5人、ラボマネージャー1人、テクニシャン2人、秘書2人、私を含めた短期的な研究生が4人でラボの総勢は約20名です。

Lazar研究室には2つの研究テーマがあり、①Repressorプロジェクトと②Diabetesプロジェクトと呼ばれて、ラボのメンバーはどちらかのプロジェクトに携わっています。脂溶性ビタミン、ステロイド、甲状腺ホルモン等、低分子量脂溶性生理活性物質は、核内受容体のリガンドとして働きます。核内受容体はリガンド結合に伴い転写共役制御因子(co-repressor)の解離と転写共役活性化因子(co-activator)の結合が起こります。

①Repressorプロジェクトのテーマは核内受容体による転写制御の分子メカニズムについて研究しています。私は②Diabetesプロジェクトに入りました。核内受容体の1つにPPARgがあります。PPARgは脂肪細胞の分化に深く関わっています。この受容体を活性化する薬物にトリグリタゾンがという抗糖尿薬として開発された薬物があります。それでDiabetesプロジェクトという名前になったようです。脂肪細胞の分化とともに分泌され、インスリンの作用を抑制する新しいホルモンを見つけたという事で、私が行った頃ラボのアクティビティーは非常に高くなっていました。私が筋肉の研究をやっていた事から、このホルモンの骨格筋に対する作用を調べるのが私のテーマになりました。プロジェクトミーティングが隔週にあり、毎週水曜日の午後はジャーナルクラブ、木曜日の朝はラボミーティングがあります。

ラボミーティングでは、冷蔵庫を新しく購入したらから試薬を移動するように等と、ラボ連絡がラボマネージャーから話されます。その後で、担当者が自分の実験データを1~2時間かけて発表します。

ラボのアクティビティーは非常に高く、ミーティングでも活発な議論がなされています 研究以外では、イベントの好きな研究室でラボのメンバーの誕生日にはケーキを皆で食べたりします。サンクスギビングデーにはラボマネージャーの家で持ち寄りパーテイ(potluck)がありました。

一番のイベントはシークレットサンタ(Secret Santa.)でした。2週間前にくじで誰にプレゼントをするかを決めます。プレゼントを3つ用意します(プレゼントの総額は決めておきます)。クリスマスの週の月曜日から木曜日の朝までに贈り主がわからないようにプレゼントを研究室の中に放置します。木曜日の朝に皆で集まって、どのようなプレゼントをどこで見つけたかを発表した後でそれぞれのシークレットサンタを投票します。

一番多く当てた人に賞金があたるという次第です。ラボのメンバーは本気になってゲームを楽しんでいました。 私はアメリカはワーキングマザーの国という印象を持っていました。しかし実際に行ってみると、デイケアスクール(日本でいう保育園)は土曜日はやっていませんし、平日でも最大延長しても6時までしかやっていません。さらに、毎日お弁当を持たせなければなりません。こんな調子で本当に働けるかなと思いました。以外でしたが日本の保育園児事情の方が良いようにさえ感じました。 残り1ヶ月余り、せいぜい見聞を広め有意義に過ごさせて頂くつもりでおります。

最後になりましたが、私の我儘を許可して下さった飯野正光教授に深く感謝致します。

留学終了/現 東京大学大学院・医学系研究科・細胞分子薬理学教室・山澤 徳志子 

 

写真1:研究室のラウンジでラボメンバーズの集合写真。約半分はクリスマス休暇中。 後列左から3番目がLazar教授。前列右が筆者。

写真2: ベンジャミン=フランクリンの銅像と後方の学生ホール。

 

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