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高血圧・癌とくすり

日 時: 平成14年11月15日(金)
会 場: ホテルグランヴィア岡山(岡山大学薬学部)
テーマ: 「高血圧・癌とくすり」

 近畿部会における市民公開講座が,11月15日(金)に,ホテルグランヴィア岡山にて,岡山大学薬学部(薬物学講座)亀井千晃教授の企画により開催されました.

 市民公開講座への取り組みは,今期広報委員会(委員長工藤佳久教授)においても重点項目の一つです.開催日時と会場は,第102回日本薬理学会近畿部会に合わせて頂きました.部会長の亀井千晃教授には,企画の当初から実施に至るまで,すべてについてご負担をおかけしました.参加者は305名に達し,会場はほぼ満席になりました.これ程多くの参加者を迎えることは,決して容易なことではありません.全く不特定の市民の方々に参加を呼びかけるわけですから,市民公開講座の広報活動にはそれ相応の工夫と努力が必要です.一般的にポスターによる呼びかけがよく用いられますが,費用と手間の割りにはそれほどの効果を期待することが難しいようです.マスメディアのなかで,テレビやラジオに比べると,地方自治体の広報紙,商業新聞や全戸無料配布のミニコミ誌による広報は,極めて効果的であるようです.亀井千晃教授は,これらのメディアを実に有効に活用されました.これらによる広報の結果,約350名を越える事前の申込者が殺到し,約50名の方々には,丁重にお断りしなければならなかったそうです.
  参加者にとって最も重要なのが演者と講演内容であることは言うまでもありません.広報委員の佐藤公道教授から,最初に『日本薬理学会の紹介と,市民への啓蒙活動を続けることも日本薬理学会の使命』との挨拶がありました.大テーマ『高血圧・癌とくすり』に基づいて,岡山大学川崎博巳教授の司会により京都大学名誉教授・家森幸男氏が『高血圧は毎日の食事で予防できる-健やかに老いる,世界調査からのヒント』と題して,ユーモアを交えてたいへん分かりやすく解説されました.世界25カ国でのWHO国際共同研究による調査結果から,食塩の過剰摂取を戒め,n-3系脂肪酸やタウリンの多い魚介類とイソフラボンに富む大豆を日常の食事として摂取を勧める話題内容には,たいへん説得力がありました.次に岡山大学名誉教授・早津彦哉氏から,見尾光庸先生による司会のもとに,『核酸化学から癌予防へ』について,参加者の面前で説得力に富む模擬実験を交えながら,説明して頂きました.特に,ブルーコットンによる発癌物質の吸着分離の開発とクロロフィルによる発癌物質の作用妨害の成果が,癌予防に結びつきつつあるとの内容に参加者は熱心に耳を傾けておられました.
  亀井千晃教授が実施された参加者(80% 余りが50歳以上)へのアンケート結果から,『薬理学会』や『薬理学』という言葉をこれまでに聞いたことがない(わからないを含めて)答えられた人は28% でした.参加されなかった市民を加えて,充分広範囲に『日本薬理学会』の名を広報して頂けたようです.日本薬理学会主催による市民公開講座が,近畿部会では,第96回近畿部会谷口隆之会長,第98回近畿部会永井博弌会長,第100回近畿部会岩尾洋会長に続いて,今回で4年目でした.来年度においては,すでに第104回近畿部会秦多恵子会長に,市民公開講座開催を引き受けて頂きました.近畿部会では5カ年連続開催となりますので,今後秋期に近畿部会会長に就任なさる方には,些か気の重い話になるかもしれません.
  先のアンケート結果から,ほとんど全員の参加者が,講演内容について『おもしろかった・わかりやすかった』と回答され,『また参加したい』と期待されておられることなどから,今後も『日本薬理学会』を理解して頂くために,(社)日本薬理学会主催の市民公開講座が地域に根付くことを祈念します.

大阪薬大・薬理、 玄番宗一 (広報委員会委員)


市民公開講座受付で,資料を受け取る参加者と受付にあたる岡山大学薬学部薬物学講座杉本幸雄先生(左端)と関係者


演者家森幸男京都大学名誉教授の講演に聴き入る満席の参加者. 演壇右端は司会者川崎博巳岡山大学教授


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