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第77 回日本薬理学会年会 市民公開講座
『新しいくすりを求めて』

大阪大院・薬・複合薬物 松田敏夫(第77回日本薬理学会年会市民公開講座世話人)

市民公開講座「新しいくすりを求めて」は,第77回日本薬理学会年会(会長,大阪大・医・三木直正教授)関連行事として年会前日3月7日(日)に千里ライフサイエンスセンターにて開かれた.「新しいくすりを求めて」というテーマは薬理学研究者の目標であり,また一般市民の願いである.

本公開講座では薬に関する情報を公開するだけでなく薬理学会が創薬研究に多大な貢献をしていることをアピールしたいと考え,市民に関心のある疾患を取り上げ,それらの治療薬の薬理作用・副作用,さらに新しい薬の研究開発について市民にわかりやすく説明することを目的とした.講師としては製薬企業の研究開発担当者,臨床医,薬学基礎研究者を選んだ.当日は,前日までの温かい日と対照的に雪のちらつく大変寒い日であったが,169名の参加があった.

講演に先立ち,日本薬理学会広報委員長の工藤佳久教授から日本薬理学会の広報活動に関する説明と本市民公開講座の目的が述べられた.講演内容は以下のとおりである.前田定秋教授(摂南大・薬)の司会のもと,藤沢薬品工業株式会社の広井純先生が「アトピー性皮膚炎治療薬」という演題で,アトピー性皮膚炎の病態,現在使用されている治療薬の作用メカニズム,それらの正しい使い方について説明された.また,それらの副作用やいくつかの開発中の薬にも言及された.

続いて, 大和谷厚教授( 大阪大・医)の司会のもと,大阪大・医・附属病院,免疫・アレルギー・感染内科の田中敏郎先生が「花粉症治療薬」という演題で,花粉症の発症メカニズム,その治療薬,それらの正しい使い方について臨床現場での経験も含めて話された. また,花粉症に有効と考えられる機能性食品についても興味ある話題が提供された.

最後に, 藤尾慈助教授( 大阪大・薬)の司会のもと,大阪大・薬の土井健史教授が「高脂血症治療薬」という演題で,コレステロール代謝の基礎から話され,HMG-CoA 還元酵素阻害薬を中心に種々の治療薬の作用メカニズムについて,さらにご自身の研究から新しい治療薬開発研究の難しさに言及された.講演の後幅広いレベルの質問があったが,講演者あるいは司会者は市民にわかりやすく説明されていた.

参加した方からのアンケート結果では,ほとんどの方が「ためになった」「おもしろかった」「わかりやすかった」等の回答をした反面,一部の参加者からは「難しかった」「専門的であった」との回答もあった.これは,「新しいくすりを求めて」というテーマであったため,講演内容に最新の研究成果が含まれていたためであろう.この点は医療従事者以外の市民には少し難しく,逆に医療従事者と思われる参加者にとっては満足のいくポイントとなっていた.

市民公開講座の対象をどのレベルに設定すべきか,難しい課題であろう.今後採り上げて欲しいテーマとしては「生活習慣病」に関するものが多かった.本市民公開講座では,聴力障害を持った市民から障害者だからこそ医療に関心があり是非参加したいという強いメッセージがあった.大阪府福祉センターと相談し対応したお陰で,より開かれた市民公開講座になったと実感した.センターからは今回の日本薬理学会の活動に対して謝意のコメントがあった.

活発な質疑応答で会は約30 分延びたが,アトピー性皮膚炎,花粉症,高脂血症治療薬の正しい使い方,また新薬開発の難しさを市民に伝えることができたと感じ,充実感を持って会を終えることが出来た.関係者,特に企画の段階で市民公開講座のノウハウを教えていただきました玄番教授( 大阪薬大), 高濱教授( 熊本大・薬),秦教授(近畿大・薬)に感謝いたします.

 


写真1 質問中の参加者



写真2 講演中の広井先生と司会の前田先生および手話通訳者

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