生活習慣病と薬物療法
山形大学消化器内科 河田純男
生活習慣病の原因は多くありますが、その中でも肥満、飲酒、喫煙などが一般的です。ここでは、とくに過栄養(食べ過ぎ)や運動不足による肥満と飲酒についてお話します。
皆さんは同じ肥満でも良性の肥満とどちらかというと悪性の肥満があることを御存知でしょうか。その違いは脂肪の溜まる場所がお腹の中であるか、それともお尻や太腿(ふともも)の皮下に溜まるかの違いで決まってきます。お腹の中に溜まる脂肪は内臓脂肪とよばれ、皮下に溜まる脂肪は皮下脂肪と呼ばれています。
どうも皮下脂肪が多い場合は良性であり、内臓脂肪が多い場合はどちらかといえば悪性と考えられます。内臓脂肪が溜まる肥満を内臓脂肪蓄積型肥満と呼んでおり、糖尿病、高血圧、高脂血症(コレステロールが高い、中性脂肪が高い)、高尿酸血症(痛風の原因になる)などに罹りやすくなります。さらに進むと狭心症、心筋梗塞や脳梗塞などが起こります。
では内臓脂肪が溜まっていることが簡単に分かる方法はないのでしょうか。簡単な見分け方はお腹がプックリと突き出ているのに皮膚をつまんでもうまくつかめないということです。このような方は体重が大して重くなくても内臓脂肪が溜まっている危険性があります。
このような場合には、適切なカロリー制限や適度の運動が役に立ちます。もし不幸にして糖尿病などの生活習慣病が見つかれば、医師による薬物療法が必要になるかもしれません。できればその前に発病を予防したいものです。
一方、お酒は百薬の長と呼ばれており、適度の飲酒は身体的にも精神的にも健康に良いのですが、過度の飲酒は肝臓を始め多くの臓器を障害して健康を害します。とくにアルコール性肝障害、痛風、高中性脂肪血症、心筋障害などに注意する必要があります。さらに精神障害や神経障害も起こってきます。また重症の膵炎(胃の辺が非常に痛くなる)を起こすと命にかかわることがあります。
ではどれくらいの飲酒量であると安全なのでしょうか。肝臓を守るという観点からみると、日本酒では一日2合、ビールでは一日大びん2本、ウイスキーではダブる水割り2杯に留めておきたいものです。そして、週に2日は休肝日をもうけましょう。