日本薬理学会について
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理事長就任のご挨拶

成宮 周(京都大学)

今回,三品昌美教授の後を受け,日本薬理学会の理事長をお引き受けすることになりました.三品前理事長,馬場前々理事長は,長年の懸案であった学会機関誌発行の外部委託を成し遂げられ,これにより学会事務局の一本化と財務状況の大幅な改善という大きな貢献をされました.これは,同時に行われたいくつかの事務局運営の整備と相まって,まさに21世紀にふさわしい日本薬理学会の体制を整えたものと言うことができます.両理事長始めこれまでの理事の方々に深甚なる謝意と敬意を表します.私は,このような大きな改革の後に日本薬理学会の舵取りを任され,責任の重さに身の引き締まる思いです.幸いに,高い見識を有する先生方が理事に就任されておられますので,共同して運営の責を全うしたいと考えております.微力ではありますが,全力を尽くすつもりでおりますので,会員の皆様のご協力,ご鞭撻をお願いする次第です.

4月26日に理事会を開催し,今期の体制を整えました.総務,財務,編集,研究推進,広報,企画教育の6つの常置委員会の委員長は,それぞれ,中谷晴昭教授(千葉大院医),谷内一彦教授(東北大院医),米田幸雄教授(金沢大院自然科学),吉岡充弘教授(北大院医),今泉祐治教授(名市大院薬),飯野正光教授(東大院医)にお願いしました.また,特別委員会である年会学術企画委員長は,赤池昭紀教授(京大院薬)にお願いすることになりました.

今期の理事会は,前期,前々期の理事会で行っていただいた上述の体制固めを受け,薬理学会の新たな飛躍を期したいと考えています.ライフサイエンスが飛躍的に発展する中で,その成果を応用すること,とくに,ヒトの健康増進に資することが,社会的に要請されています.我が国においても,医薬品の創製が政府の科学技術振興施策の中心的課題の一つとして取り上げられており,創薬科学の中心である薬理学会の時代が来ていると申しても過言でないと思います.しかし,医学・生命科学諸分野の進展は,一方で研究手法の普遍化を促し,他方で,ヒトの病気の解析が直接に薬物開発に結びつく時代を産み出しています.その中で,大事なのは,薬理学,薬理学会がこれまで果たしてきた役割を確認し,21世紀におけるidentityを確立,他学会との差別化を図ることであると思います.例えば,薬理学会は,これまで,創薬に携わっている企業の研究者とアカデミアの研究者のインターフェースの役割を果たしてきました.これは,日本薬理学会で,企業所属の会員が全会員の三分の一を占めている状況に反映されています.しかし,近年,年会への企業所属の会員の参加は減少しているように見受けられます.私どもは,この傾向に留意し,アカデミアと企業のインターフェースとしての薬理学会の活動を保持し拡大しなくてはならないと考えています.その意味で,薬理学を,基礎から臨床応用までを一体としてカバーする学問領域と捉え,学会として,この方向を促進することも重要と思われます.この点では,これまで行われた日本臨床薬理学会や日本トキシコロジー学会との連携は益々重要となっていくと考えます.また,現在の政府の施策は,橋渡し研究や治験体制の整備に傾いていますが,申すまでもなく,これらは,基礎となる発見があってのものです.薬理学会としては,創薬というかけ声のなかで,基礎研究の重要性を訴えていくことが重要と考えます.最後に,JPSのimpact factorが2.2を越え,日本の学会誌として,極めて高い水準に達したことは,まことによろこばしいことです.歴代の編集委員のご努力に敬意を表する次第です.また,JPSへの国外(特に,アジア諸国)からの投稿も増加をたどっております.これは,アジアの中での日本薬理学会への期待を表すものと考えます.今後,飛躍的に発展が見込まれるアジアの科学の中で,日本薬理学会が中心的な役割を担う歴史的な時期に来ているのかもしれません.幸い,次期年会では,元村会長のお考えで,日中薬理・臨床薬理シンポジウムが年会の一部として開催されますし,本年の日韓合同薬理学セミナーは,韓国薬理学会の年会の中で開催されると聞いております.今後,アジア諸国の学会との交流が益々盛んになると考えられ,これをシステムとしてどう展開するかが課題と考えます.今期,理事会は,上述した諸課題につき,各委員会での議論に基づき,今後の薬理学会の方向性を出したいと考えています.また,何にせよ,企画し実行したものを,評価し,次の企画にフィードバックするという体制が必要です.今期の理事会は,このような学会としてのフィードバック・サイクルの確立にも務めたいと考えています.会員諸氏のご支援とインプットをお願い申し上げます.

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