日本薬理学会について
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理事長就任のご挨拶

松木 則夫
東京大学大学院薬学系研究科

このたび,成宮周教授の後を受け,日本薬理学会の理事長に就任させていただきました.よろしくお願い申し上げます.馬場理事長と三品理事長の時に,学会誌発行の外部委託と事務局の一本化をなし遂げ,組織改革を完成されました.成宮理事長はそれを受けて,「薬理学会を医学,薬学と企業のインターフェイスとして捉え,これを年会活動と雑誌刊行で具現化して行く」という明確な学会活動の目標を設定されました.従来の薬理学に,臨床的な視点を加え,企業の取り組みや若手による企画を積極的に取り入れ,年会を年会長だけに委ねるのではなく,理事会,年会学術企画委員会との密接な協議を継続し,他学会との連携と国際化を進められ,今年の3月に岩尾洋年会長のもとに開催された第83回年会で具現化されました.

このように,薬理学会はまさに体制を整えて大きく飛び出したところです.私の役目は,これを失速させないように継続し,できれば二段目のロケットとなれるように頑張ることだと自覚しています.また,学会の活動を評価・総括して,それをフィード・バックして長期的な展望に反映させることも求められています.

今期の理事会は,フレッシュな顔ぶれが揃いましたが,逆に言えば経験不足の感があります.しかし,成宮前理事長をはじめ,経験豊富な飯野先生(東大)と赤池先生(京大)が次期,次々期年会長として理事会に残られましたので,経験とフレッシュな力を融合できればと思います.4月10日に理事会を開催し,総務委員長に鈴木勉教授(星薬科大学),財務委員長に小口勝司教授(昭和大学),編集委員長に米田幸雄教授(金沢大学),研究推進委員長に吉岡充弘教授(北海道大学),広報委員長に今泉祐治教授(名古屋市立大学),企画教育委員長に柳澤輝行教授(東北大学),それに特別委員会の年会学術企画委員長に井上和秀教授(九州大学)を選出し,皆で力を合わせて上記目標に向かうことになりました.米田教授,今泉教授,吉岡教授は留任ですので,存分に力を発揮していただきたいと思います.

今期の理事会に課せられた課題の一つは公益社団法人化です.前期の理事会の議論で,公益社団法人として認定される方向で検討することになりました.既にワーキンググループを立ち上げ,議論を進めていますが,細かな議論を含め具体的なことは,全て今期に委ねられています.新しい法律による公益法人制度は,日本薬理学会のような学会を念頭に制定されておらず,日常の学会活動とはかなり遊離した制度設計となってしまっています.制度的には問題がありますが,認定されれば,公益社団法人の名称が独占的に使用でき,源泉所得税や預貯金の利息が非課税になり,寄付者に税制の優遇措置がある,などのメリットの他に,何と言っても社会的なステータスが上がるという利点があります.しかし,単に法人の名称が変わるだけではなく,「公益性」や「ガバナンス」の確保が強く求められ,3年ごとに立ち入り調査があります.学会の管理運営経費も増えると予想され,申請に向けての書類作成もかなりの労力を要します.また,認定されれば,現在の法人を解散し,新しい法人に移行するための臨時総会も開催しなければなりません.学術集会の会計などは従来よりルールが厳しい面も出てくると予想され,会員の皆様の意識変革も必要になるでしょう.いずれにせよ,早い段階で概要を会員の皆さまにお示しして,ご意見を伺いたいと思います.

年会と学術誌の発行が学会活動の二本柱です.Journal of Pharmacological Sciences(JPS)のインパクト・ファクター(IF)は年々上昇し,日本で発行される学術雑誌のトップ10入りを果たしました.編集委員会をはじめ関係された全ての方々に感謝申し上げるとともに,今後の更なるご協力をお願いします.第83回年会では,若手や企業の人の主体的な参加についての方向性が示されました.今後はさらにそれを継続発展させて行きたいと考えています.しかし何と言っても「会員の皆様が優れた研究を行い,それを学会で発表し,雑誌に掲載する」ことに尽きます.それが実践できれば学会参加者は増え,雑誌IFは上昇します.そのため,実験薬理学シリーズの刊行や新薬理学セミナーの開催など薬理学研究へのサポートをさらに進めていきたいと思います.アジア諸国をはじめ,グローバル化による国際交流の進展についても継続させていきたいと考えています.IUPHAR2018年世界大会を日本で開催することに立候補しており,7月の投票で決定すれば直ちに準備に取りかかります.日本薬理学会の第84回年会は飯野年会長のもと,The 11th Southeast Asian Western Pacific Regional Meeting of Pharmacologistsと,また第63回西南部会では山田部会長のもと日韓薬理学合同セミナーとそれぞれ同時開催されますので,グローバル化の推進に追い風となります.

昨年開かれた行政刷新会議による仕分けを通じて明らかになったことは,「国民は科学技術の重要性は認識しているが,その成果や予算配分の公平性については理解していない」ことです.今までも研究成果の公表は行ってきましたが,国民目線のものは少なかったと思われます.広報活動を充実させ,研究費配分の審査や評価についても,透明性と公正性を確保してアピールしていく必要があると思います.研究成果をコスト・パフォーマンスで評価されることは問題ですが,効率的な運用と節約は考えていく必要があるでしょう.薬理学会だけの問題ではないので,他学会と共同したいと思います.

薬理学の発展のために頑張る所存ですので,会員の皆様からの叱咤激励とご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます.

(Norio Matsuki)

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