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日本薬理学会の更なる発展を見据えて

飯野 正光
東京大学大学院医学系研究科

 薬理学は薬物治療の基盤を形成する重要な学問領域として確固たる立ち位置を有しています.また,日本薬理学会(本会)は公益社団法人として社会的に認知され,定款に謳われている通り,薬理学の進歩を図ることを通して我国の学術文化の発展に寄与することが期待されています.この目的を達成するには,到達目標を見据えながらも,日々変化する社会の動きに目を向けて,継続的に活性化策を模索することが必要です.

 学会の活性化に要求される最も基本的な要件は,良質のサイエンスです.薬理学では,分子である薬物の作用を最終的には個体レベルで評価することが要求されており,分子,細胞,組織,器官,そして個体レベルの理解が必要とされます.薬物は多数の個人に投与されるため,個体間の薬効の差異を評価・解析する必要もあります.また,新たな薬物治療開発の種子となる基礎的な研究から,臨床現場で実際の薬物治療を行う際に必要な研究まで全てが薬理学の守備範囲に入ります.このように,薬理学は分子レベルから集団レベルまで,基礎から臨床までの幅広い理解を必要とする,統合的な学問分野です.従って,広範な方法論を駆使して先端的な研究を進めることが,薬理学の進展には要求されています.これを達成するために,様々な背景を持つ研究者に薬理学研究に参加していただきたいと思います.本会は,会員の知的好奇心を満たし,会員相互の交流によって研究に関する新たなアイディアを触発することを通して,最終的には薬物治療法の更なる発展を支援していきます.

 ところで,4年毎に世界中の薬理学研究者が集う国際薬理学・臨床薬理学会議(WCP)が,2018年7月に京都で開催されます.これを,本会の更なる活性化と国際化を進める好機としたいと考えています.WCP2018本会議の成功を目指して準備を進めるとともに,学術集会の国際化も進めて行きます.また,本会の英文機関誌Journal of Pharmacological Sciencesの国際的ステータスの更なる向上を目指していくことも重要です.本会は,学術集会で発表される演題の質・量や会員数からみて世界でも最大クラスの薬理学会です.これを世界に向かって開きつつ,会員の皆様とともに本会の更なる発展を目指したいと考えております.

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