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学会員の著書紹介

Basic & Clinical Pharmacology. 8th ed.(カッツング・薬理学)

Bertram G. Katzung 編

Lange Medical Books/ McGraw-Hill/

ISBN 0-8385-0598-8
本体 6,740円
刊行年2000年9月

薬理学の入門・基礎から発展して関連臨床分野の学習にも極めて有益で、さらには日常診療・薬剤業務に必須の臨床薬理学や臨床薬学までも網羅している。

主要目次


I. BASIC PRINCIPLES
II. AUTONOMIC DRUGS
III. CARDIOVASCULAR-RENAL DRUGS
V. DRUGS WITH IMPORTANT ACTIONS ON SMOOTH MUSCLE
V. DRUGS THAT ACT IN THE CENTRAL NERVOUS SYSTEM
VI. DRUGS USED TO TREAT DISEASES OF THE BLOOD, INFLAMMATION, & GOUT
VII. ENDOCRINE DRUGS
VIII. CHEMOTHERAPEUTIC DRUGS
IX. TOXICOLOGY
X. SPECIAL TOPICS

書評

旧聞に属することを恐れず,世界的に有名な教科書を紹介したい.

 原著の前書きの抄訳で,紹介の労を半分にさせてもらう.「この本は医学・薬学その他の健康科学の学生のために完全で権威ある最新の読みやすい薬理学教科書を提供しようと考えてできたものである.病院医師・薬剤師や診療医にとっても役立つ特別関連記事も掲げている.

 構成は多くの薬理学教科課程でとられている順番にそって情報を構築している;基本原理;自律神経系薬;心血管・腎臓薬;平滑筋作用薬;中枢神経系薬;炎症・痛風・血液病治療薬;内分泌薬;化学療法薬;毒科学;特殊題目の順である.・・・各章では,個々の薬物の繰り返しになりがちな詳細を述べることよりは,むしろ薬物群や典型的な薬物についての記述を強調した.・・・専門の学生にとって本書が特に有益で主要な特徴は,臨床の場での薬物の選択と種々の患者における使用法,そして薬物の効果を追跡できるように書かれた部分,すなわち臨床薬理学がこの教科書の種々の要素を統合した構成部である.・・・

 関連して薬理学の最大の問題数と解説を誇るKatzung & Trevor's Pharmacology: Examination & Board Review,6版『薬理学(問題とまとめ)』(2001年)がある.これは共用試験や国家試験型の試験を準備している学生にとって特に有用である.」本書の歴史は,1968~1980年に2年ごとに発行されたLange シリーズMyers' Review of Medical Pharmacology(第7版)の後を受けて,Basic & Clinical Pharmacology(編著者Katzung)として1982年に第1版が出版され,2000年に第8版が出されるまでに成長してきたものである.

 第1版の当時はMaruzen Asian Edition(アジア版)の形であった.読者の中にもアジア版で,米国の医学の息吹に触れ学業を積んでこられた方々も多いと想像する.本書は薬理学と関連領域の概念の記述が的確で,図表もきわめて新鮮でイメージを把握しやすく(例,図14-8.不整脈の機序,リエントリー;掛け値なしに一見に値する),英語も学生が論理的に理解できるようにと読みやすく,文中の形容詞や副詞による修飾がオリジナルの論文を熟知しているものから見ても極めて的確であった.あらゆる面で「こんなによい教科書があるのか」と感銘を受けた.以来常々,基礎と臨床薬理学とがこれほどバランスよく取り上げられた教科書は他にないと考えてきた.53もの興味深い囲み記事,イラストの改良,情報量の多い吟味された参考文献も有益であった.

 薬理学全般にわたって最新の進歩を取り入れて2~3年で改訂を繰り返し行ってきた著者の努力と教育への情熱は並大抵のものではないと尊敬し,版が改まるのを楽しみにしながら購入してきた.薬理学の内容は生命科学の進歩と新薬開発や質の高い医療を目指す医学の進歩とがあいまって,専門家ですらその詳細に通ずることはもちろん,個々の事柄を調べることも容易ではなくなっている.

 その一方で現在,医歯薬系に限らず大学教育において,例えば,「モデル・コア・カリキュラム」などを基にした学生の自主学習が推奨されている.それゆえにまさしく,「学生のために完全で権威ある最新の読みやすい薬理学の教科書」が求められている.この教科書は自学自習用にも教科課程にも,ともに信頼して用いることができる.医学教育において薬理学は基礎と臨床医学とをつなぐ科目として位置づけられている.本書のように病態生理学を基礎にした薬物治療を学習の軸にすると,医学・薬学関連分野の知識修得にしっかりとした心棒が通ることになる.

 本書は薬理学の入門・基礎から発展して関連臨床分野の学習にも極めて有益で,さらには日常診療・薬剤業務に必須の臨床薬理学や臨床薬学までも網羅している.とはいうもののページ数から推し量れるように,すべての章や付録までをも通読することは,おそらく極めて困難であろう.優れた本文を合理的に利用するために必須な要素が索引である.「索引が完備していない本は学術書とはいえない」ともいわれ,欧米の書籍の索引の利便性は素晴らしい.本書もその例に漏れず83頁も索引に割き,あたかもバランスのとれた専門的な小辞典ともなっている.索引を使いこなせば,学生にとっては薬理学と他分野の知識の関連づけや統合に役立ち,多忙な教師には薬理学の展望を与え,時間に追われる臨床医,薬剤師が医療現場の薬物治療マニュアルとして利用できるようにもなっている.日本語版も出版されることになっており,ご自分で実際に確認していただければ,あえて有名な教科書を紹介していることを理解していただけるものと信ずる.

(東北大・医・分子薬理 柳澤 輝行)

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