学会員の著書紹介
小動物の臨床薬理学
尾崎
博・西村 亮平(著)
文永堂出版
ISBN 4-8300-3190-5
定価 16,000円
刊行年2003年5月 獣医臨床分野において、わが国で最初の「臨床に役に立つ薬理の本」である。
主要目次
| 第1章 吸入麻酔薬 第2章 注射用全身麻酔薬 第3章 静穏薬・鎮静薬 第4章 抗てんかん薬 第5章 オピオイド 第6章 局所麻酔薬 第7章 血管拡張薬 第8章 強心薬 第9章 抗不整脈薬 第10章 血液凝固系に作用する薬物 第11章 利尿薬 第12章 呼吸器系の薬 第13章 胃疾患の治療薬 第14章 腸疾患の治療薬 |
第15章 NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬 第16章 副腎皮質ステロイド薬(コルチコステロイド) 第17章 アレルギー性疾患の治療薬 第18章 糖尿病の治療薬 第19章 生殖器疾患の薬 第20章 抗腫瘍薬 第21章 抗菌薬 第22章 抗真菌薬 第23章 駆虫薬 第24章 殺虫薬 第25章 問題行動の治療薬 第26章 ワクチン 第27章 動物医療における医薬品と法規制 第28章 薬に関するインフォームド・コンセント |
書評
米国の医学部から薬理学講座が消えている。その理由の一つは医師にとって必要な知識は「臨床薬理学」あるいは「薬物治療学」であって、基礎ばかりやっている「薬理学」は不要、というものである。薬理学は薬物開発にも役に立つ(と思っている人もいる)。しかし、これも実績から見るとはなはだ心もとない。そんなこともあってか、製薬企業研究所からも「薬理」の看板が次々消えている。
薬理学は、「薬の作用を知る」ためにあるが、その結果を臨床にも創薬にも利用できる。しかし、実際には薬理学は臨床や創薬に本気でかかわってはこなかった。獣医領域でも臨床に役に立つ薬の教科書がほしいという声が高かったが、そんな本はほとんどなかった。そんな状況の被害者は、国家試験のために薬理学を勉強するけれど、薬理学が獣医臨床のためになるとは考えたこともない学生たちであり、社会に出た獣医師である。
この本は、臨床を考えずに薬理学を教えていた尾崎助教授と、薬理学を考えずに薬物治療をしていた西村助教授が、そのような過去を深く反省し、仲が悪い基礎と臨床の壁を越えて、協力をして書き上げた、わが国で最初の「臨床に役に立つ薬理の本」である。臨床で実際に使う薬を中心にして、なぜその薬が効くのかについての薬理学的な解説と、どんな病気にどんな使いかたをするのかについて薬物治療学の解説を融合させて、分かりやすく、しかも役に立つ書き方を試みている。臨床家と臨床を志す学生には必携の一冊である。
(唐木英明・東京大学名誉教授)

