2003年6月12日掲載
「生薬成分の薬効評価のガイドライン」が策定されました
最近、生薬成分の薬理作用を検討した論文が、JPS にかなりの数投稿されてきております。単一成分の場合はよいのですが、複数成分での薬効評価、作用機序の解明などは、種々の点で審査が困難となる例があります。例えば、
1.植物や天然物単体の水あるいはメタノール等により抽出を行った粗エキス(分画や精製をしていないもの)の薬効試験結果。粗エキスから調製したアルカロイド分画やフェノール分画など、ある程度精製したエキスでないと品質を担保することは難しい。
2.薬用植物数種類を混合した材料から抽出したエキスの薬効試験。品質保証が得にくいーは上記と同様。漢方薬、中薬や韓薬がこれに相当する。近年、漢方薬の品質については抽出液を3次元の液体クロマトグラフで成分profileを明示する方法が考案されているが、有効成分との関係がまだ明確ではない。
そこで、今回、富山医科薬科大学和漢薬研究所生物試験部門の渡辺裕司教授により以下のようなガイドラインを作製して頂きました。このガイドラインに沿った論文を審査することになりましたので、ご協力のほどをお願いします。
「生薬成分の薬効評価のガイドライン」
1.植物は種の学名をラテン語(イタリック体、命名者名は立体)で記載し、植物が属する属または科名を括弧書きすること。採集した植物の場合は同定したヒトの氏名/所属を明記すること。市販の生薬の場合は購入先とロット番号を記載する。
2.使用した植物は標本番号を付して永久保存(番号と保存場所を論文に明記)しておくこと。他の研究者から要請があれば提示する。
3.抽出エキスの収率を明記する。
4.植物の化学的品質を示すため、分画エキスのHPLCあるいはTLCの成分profileを提示すること。その際、可能な限りどのピークが何かを示すこと。(なお、このデータは編集部保管とし、論文には必ずしも掲載する必要はない)。
5.抽出エキスの薬効を評価する際は、その試験に見合った標準薬の作用をエキスと同時に試験すること。標準薬の使用は、薬効評価方法の妥当性を示すと同時に、効力比や作用機序の推定にも役立つ。
備考: JPSに記載する英文は、上記文章を英訳し、渡辺教授の校閲を得ましたので、早速、JPS5月号の投稿規定欄に挿入しました。日薬理誌は7月号より改訂しました。渡辺裕司教授の迅速かつ適切なアドバイスに心から感謝の意を表します。
編集委員長 岡部 進