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インターネットで入手する薬物の危険性

●日時 平成14年10月3日(金)
●会場 仙台戦災復興記念会館
●テーマ インターネットで入手する薬物の危険性

市民公開講座が昨年10月3日(金)午後、仙台市戦災復興記念館で第54回北部会(篠田壽会長、東北大・歯・歯科薬理)に連動して開催されました。平日にもかかわらず参加者は約140名で、テレビ報道され、質疑も活発で充実感を持って終えることができました。関係者に深くお礼申し上げます。

好奇心や手軽な薬を求める消費者心理を背景に、業者の販売至上主義、外国の思惑までもが加わって、危険な薬物がインターネット市場に出回っています。相次ぐダイエット・健康食品による健康被害の問題と食欲抑制作用をうたう依存性をもつ合法・非合法薬物の問題に対して、文部科学省の援助のもとに社会に対して薬理学的観点からの啓蒙的講演会を計画しました。社会性・精神面も視野に入れて共感を生む工夫をしながら注意喚起を行い、販売至上主義に操られている現状認識を広め、「健康よりダイエット」という風潮を健全に批判する精神や「簡単に入手できる危険性」を防ぐ科学的精神を養いたいと企画しました。

全体は、1)橋本敬太郎理事長ご挨拶、2)「インターネット上の薬物の危険性;ダイエットピルから見た」(柳澤)、3)「薬物依存者からのメッセージ」(飯室勉氏、仙台ダルク施設長)、4)「依存性薬物の行動精神薬理学」(鈴木勉教授、星薬科大・薬品毒性学)、休憩の後、5)会場からの質問を交えた総合討論でした。コメンテーターとして薬物・アルコール依存症に詳しい石川達東北会病院副院長(精神科医)を交えて、市民と薬理学会員との交流を促しました。素朴な疑問から踏み込んだ悩みに対して、多方面からの提案とトークを提供しました。

  1. 市民に対して、主催者より薬理学会の説明と宣伝、会の目的、科学研究費補助金で援助を受けていることをお話いただきました。
  2. ネットで入手可能な薬物、健康食品・栄養補助食品と不都合や危険例、ネット上の健康情報の利用の手引きについて解説して前半としました。ついで肥満の科学入門、肥満関連疾患(生活習慣病)、食欲・摂食行動の調節機構、アドレナリンβ3受容体アゴニスト、肥満治療を概説し、安全性と有効性に証明がないダイエットピルに医薬品並の効果を求めるべきではなく、注意と警戒を怠るべきではないと訴えました。
  3. 現在、ダルクDARC (Drug Addiction Rehabilitation Center)では「今日一日だけ薬を使うのを止めよう」というスローガンを基礎に、社会復帰活動と学校を中心とした啓蒙活動をしています。前日のNHK番組、リタリン(メチルフェニデート)がほしいために病院で暴れる未成年の患者の例。「14年間、薬を使い続け、生きる事も死ぬ事も出来なくなっていた。」という経験。医療関係者の依存者がリハビリしている例などを挙げながら、依存症は隠されがちで、家族が孤立して悩んでいると報告し、依存者排除ではなく、地域のネットワーク(病院、薬局、公的機関)があれば、予防も可能となり、軽症のうちに社会復帰できる人が増えると訴えました。
  4. 現在は覚醒剤乱用の第3次乱用期に突入し、大きな社会問題になっている。薬物使用を誘惑された者535万人、内半数の人が1回以上使っている。特徴は中高生などへの低年齢化、注射から吸入への移行などで、薬物乱用が多様化している。薬物依存の形成過程と種々の薬物を解説し、正しい依存性薬物の知識を持つことが最大の防衛とアピールしました。最後に癌性疼痛など痛みがあれば、モルヒネによる依存性は起きにくいメカニズムを解説しました。
  5. 薬物依存者が目の前にあらわれたときには?薬剤師からみて思うこと、覚醒剤や危険な薬物売買の実態、などなど。

参加者の「今日は何かたらふくおいしいごちそうをいただいた感じがします」のように、多彩で充実していて概観することすら困難です。内容と記録を薬理学会や我々のホームページにも掲げますので、興味のある方はご覧になってください。

広報委員会委員
柳澤輝行(市民公開講座実行委員長、東北大学・医・分子薬理学教授)
e-mail:molpharm@mail.tains.tohoku.ac.jp
homepage:http://www.pharmacology.med.tohoku.ac.jp/


詳細は書きファイルをご覧ください(PDF形式)

パンフレット
発表原稿
発表スライド
 1. インターネット上の薬物の危険性
 2. 薬物依存者からのメッセージ
 3. 依存性薬物の行動精神薬理学


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